The Chronicle of Broadway and me #378(The Musical Of Musicals(The Musical!))

2004年7月@ニューヨーク(その5)

 『The Musical Of Musicals(The Musical!)』(7月17日14:30@York Theatre)は、前シーズン(2003/2004)のドラマ・デスク賞で作品賞の対象になっていた。
 そのことについて、観劇当時、次のように書いている。

<同じプロットを、著名な5組のミュージカル楽曲作家の作風を真似た楽曲を使って、5通りに演じてみせるという、『Forbidden Broadway』『タモリ3』(ごぞんじですか?)を合わせたような趣向は、明らかにマニア向き。面白いが、『Caroline, Or Change』『Wicked』と肩を並べて作品賞候補に挙げるほどだろうか。>

 まあ、ドラマ・デスク賞は、オンとオフを並列にして審査するという根本的な部分も含め曖昧なところの多い賞なので、目くじらを立てるほどのことではない。が、同じようにパロディ要素の強い、ある程度似た趣向を持つ作品は他にも少なからず観てきたが、それらの作品と比べても、この『The Musical Of Musicals(The Musical!)』がことさら優れているとは思えなかった、というのは事実。
 ちなみに、『タモリ3』とは「戦後日本歌謡史」というサブタイトルの付いたタモリのアルバムで、全曲、 戦後日本歌謡史に残る有名曲の“変則”替え歌。“変則”と言うのは、歌詞が元歌をなぞりながら変えてあるのはもちろんだが、メロディも、一聴すれば「あの曲!」とわかるけれども、よく聴くと微妙に違っている、という作り。この作品で流れる楽曲も、そういうこと。
 あと、「同じプロット」というのは間違いで、主要キャラクター4人がほぼ同じ名前で各話に違った設定で出てくる、という構成。オフ・ブロードウェイのこうしたショウの定型で、出演者が男女2人ずつの4人。なので、その4人の演じる主要キャラクターが別の話でどんな風に出てくるかが楽しみのひとつとなる。それを前提にしての構成。もちろん彼らは各話で他にも多くの役を兼ねる。

 “真似”される5組の楽曲作家は順に次の通り。
 リチャード・ロジャーズ&オスカー・ハマースタイン二世。
 スティーヴン・ソンドハイム。
 ジェリー・ハーマン。
 アンドリュー・ロイド・ウェバー。
 ジョン・カンダー&フレッド・エブ。

 ヨーク劇場の年齢高めの客層を反映した安定のラインナップと言っていい。2003年12月16日から翌年1月25日まで上演した後、5月24日に再オープン、10月2日まで続いている。その再オープン公演を観たわけだが、ヨーク劇場としては異例のヒットだと思われる。
 ただ、その分、個人的には刺激が少ない。例えば、最新シーズンの上演作品をリアルタイムでパロディにしてしまう『Forbidden Broadway』と比べると、緩い感じは否めない。そこがウケる層にはウケるのだろうが。

 作曲・脚本エリック・ロックウェル、作詞・脚本ジョアンヌ・ボガート。この2人は出演もしている。
 残る2人の出演者は、クレイグ・フォルズとラヴェット・ジョージ。
 プレイビルのラヴェット・ジョージの紹介文が面白いので抜粋して載せておく。
 「キャリー役を(オードラ・マクドナルドが休演の時の)リンカーン・センターの『Carousel』で、パール役をドイツの(ドイツ語による)『Starlight Express』で、マルタ役を大学で上演した『Company』で、ヴェルマ役を『Chigago』(どこの公演だかは気にしないで)で演じたことがある。ラヴェットは、この作品の中の4つのスタイルについては馴染みがある。」
 今ネットに上がっている同作品の地方公演の映像等を観ていると、この人たちがうまかったことがよくわかる。

 演出・振付はパメラ・ハント。

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