The Chronicle of Broadway and me #665(Ennio Marchetto: The Living Paper Cartoon/Balls…The Musical?/Central Avenue Breakdown/Tour De Fierce)

★2011年10月＠ニューヨーク（その6）

　NYMF（ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル）参加作品7本を2分割して、その1。

　『Ennio Marchetto: The Living Paper Cartoon』（10月12日20:00@47 Street Theatre）について旧サイトに書いた観劇当時の感想（＜＞内）。

＜エニーオ・マーチェットという人のひとり舞台で、繰り広げるのは、漫画的タッチで描かれた、正面から見ると衣装（やカツラ）に見える紙を、レオタード姿の身体に付けて、既成の音楽に合わせて口パクで踊る、という一見チープな芸。これが、けっこう面白い。
　面白さのポイントは2つ。1つは、その紙の衣装のアイディア。シンプルながら変化に富み、さらに意外な変化を見せて飽きさせない。もう1つは、演者であるマーチェットの巧みな振り。何気ないようで、実に本家の特徴をよく捉えていて、芸として深い。
　まあ、これがミュージカルかと言われると微妙だが（笑）、でも、なかなかでした。＞

　原案エニーオ・マーチェット、演出・衣装デザインはマーチェットとソスデン・ヘネカム。

　『Balls…The Musical?』（10月13日23:00@47 Street Theatre）について旧サイトに書いた観劇当時の感想（＜＞内）。

＜ニューヨークでミュージカル俳優として成功することを夢見る男5人の替え歌ミュージカル。“ボールズ”とは、男性が有する2つの玉のことですな。
　替え歌の元ネタはいずれもミュージカルの楽曲で、いかにも生活の中でそんな替え歌を歌っていそうで、そのリアルな感じもおかしい。さらに、実際には“成功”には到っていないと思われる出演者の実人生が舞台上のドラマ（“売れないミュージカル俳優の日常”的な内容）と重なって見えたりして、そんなところもペーソスを伴った面白さにつながっている。＞

　替え歌の作詞と脚本は出演者たち5人で、ミック・ボンド、ブレット・カー、ブランドン・エリス、マイケル・“”・マッキンジー、ニック・ヴェリーナ。
　演出ケイシー・マリーノ。振付アビー・リー。

　『Central Avenue Breakdown』（10月14日19:30@Peter Norton Space/Signature Theatre）について旧サイトに書いた観劇当時の感想（＜＞内）。

＜ビバップ誕生期の西海岸を舞台にした黒人ジャズ・ミュージシャンの物語。
　売れないジャズ・ミュージシャンだった父親は、息子たちを、やはりジャズ・ミュージシャンに育てるが、才能はそこそこだが人柄のいい兄に目をかけ、才能は素晴らしいが奔放なところがあって人間的に弱い弟を疎んじる。やがて兄はオーソドックスなプレイで成功をつかみ、弟はビバップ的才能を理解されず麻薬に溺れ……、というストーリーは意外性がなく面白みに欠ける。
　楽器の演奏も完全に吹き替えだし（後ろにいるホンモノのミュージシャンがシンクロ演奏する）、いろいろな面で中途半端な感じは否めない。＞

　作曲・作詞・原案ケヴィン・レイ、脚本ケヴィン・レイ＆ジョシュ・ソーン。
　演出・振付ジャスティン・ホーンバック。

　『Tour De Fierce』（10月14日23:00@47 Street Theatre）について旧サイトに書いた観劇当時の感想（＜＞内）。

＜ブロードウェイ・ミュージカル出演経験を持つ若手女優5人が“ブロードウェイ・ドールズ”と名乗って見せる、歌と踊りのショウで、楽曲はミュージカル・ナンバーを中心に全て既成のもの。そういう意味では、『Balls…The Musical?』と似ているが、違うのは、こちらは、ある種のアイドル・グループ的な佇まいであるところ。ドラマ仕立てでもない。
　要するに、若手女優の歌と踊りを楽しむ会、ってことでした。＞

　原案ホリー・ハワード＆ジョーイ・マレイ。
　演出ジョーイ・マレイ。振付ジョーダン・ファイフ・ハント。

　原案のホリー・ハワードは、この舞台プロデューサーでもあり、出演者でもある。ブロードウェイの『Annie Get Your Gun』『Mamma Mia!』『Hairspray』に出演経験あり。
　出演は他に、トレイシー・ビーザー、トレイシー・ジェイ・エドワーズ、ロビン・ハーダー、ガブリエル・ルイズ。ダンス・キャプテンとしてチェルシー・モーガン・ストックのクレジットがある。