The Chronicle of Broadway and me #702(La Cabaret Grimm/My Perfect Pet/Travesties Of 2012/Prison Dancer/Marina/Rent[3])

★2012年7月＠ニューヨーク（その7）

　NYMF（ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル）参加作品15本を3分割して、その3。プラス、オフに移った『Rent』のこと。

　『Le Cabaret Grimm』（7月27日23:00@45th Street Theatre(Main Stage)）には「a punk cabaret fairy tale {sans fairies}」という副題が付いている。パンクなキャバレーおとぎ話（ただし妖精抜き）。ボストンの Liars & Believers という組織の作品らしい。組織名と題材が妙にマッチしているのは偶然か。その名の通り、グリム童話を題材にしたバーレスク的なショウ。
　作曲カサンドラ・マーシュ、作詞・脚本・演出ジェイソン・スラヴィック。
　

　『My Perfect Pet』（7月28日11:00@45th Street Theatre(Main Stage)）はリーディング上演。誕生日プレゼントに子犬が欲しくてたまらない女の子。彼女に子犬の面倒を見る資格があることを両親に証明できるでしょうか？ というわけで女の子の日常のチェックが始まる。そんなファミリー向けミュージカル。2017年秋に完全版が上演されたようだ。
　作曲・作詞ジェフ・アイゼンバーグ。脚本ブルース・J・ロビンソン。
　演出マーロ・ハンター。
　

　『Travesties Of 2012』（7月28日18:00@45th Street Theatre(Main Stage)）には、「アメリカン・ヴォードヴィル・シアターがお贈りする」という枕詞が付いている、つまりヴォードヴィル・ショウ。同団体を主宰するのはトラヴ・S・Dという劇作家。彼が、スケッチ（コント）や楽曲を書き、司会をし、芸人を手配する。ということで、全8公演の出演者は、固定メンバーもいるが、回によって顔ぶれが変わっている。
　演出ジョン・ハーリー。振付アレグザンダー・マクドナルド。
　

　『Prison Dancer: The Musical』（7月28日21:00@Theatre At St. Clements）の元は、実話を元にしたTVシリーズらしい。フィリピンの監獄でリハビリのために始めた囚人たちのダンスがYouTubeを通じて話題になり、彼らに新たな道が開かれる可能性が生まれる、という話。その舞台ミュージカル化。
　作曲・作詞ロメオ・キャンディード。脚本ロメオ・キャンディード＆カーメン・デ・ジーザス。
　演出・振付ジェン・ラップ。
　ホセ・ラーナ（『Street Corner Symphony』『Flower Drum Song』）が出ていた。
　

　『Marina』（7月29日12:00@45th Street Theatre(Main Stage)）もリーディング上演。舞台は1908年のワシントン州の漁港ブレイン。2つの恋愛を軸にしながら、そこに暮らす様々な人々の波瀾に満ちた人生が描かれる。という内容だと思うが、あまり理解できなかった気がする。
　作曲ジャスティン・メルランド、作詞サンディ・ウルフ＆ジャスティン・メルランド。脚本サンディ・ウルフ。ウルフはブレインの、メルランドも近郊のベリンハム出身らしい。
　演出アンドレア・マッカロー。
　

　『Rent』（7月29日19:30@Stage 1/New World Stages）のオフ・ブロードウェイでのリヴァイヴァルは前年（2011年）の7月14日にプレヴュー開始、8月11日に正式オープンしている。でもって、この年（2012年）の9月9日にクローズ。
　初演演出のマイケル・グリーフによる新演出が受け入れられなかったという説、役者の演技が不満だったという説、いろいろある。
　ブロードウェイでの開幕直後の感想に、「ブロードウェイでの経験などほとんど持たない若い役者たちが、自身の現実とダブって見える役を体当たりで演じるという迫真性。これが『Rent』がブロードウェイで新しく見える最大の理由だろうし、人々を惹きつけている理由でもある。だからこそ、と思う。この作品がロングランするのは難しいのではないか。こうした、演じる者にとってリアルな舞台が、長く続くことで変質するのかしないのか。」と書いた。『Rent』は優れた作品だが、とはいえ、それでも、舞台作品は根本的には時代と共にあるのだと思う。