The Chronicle of Broadway and me #305(Little Ham/Harlem Song)

2002年9月@ニューヨーク(その4)

 ハーレムが舞台のオフの2作品。

 『Little Ham』(9月20日20:00@John Houseman Theatre)は、ラングストン・ヒューズの同名戯曲のミュージカル化。
 作曲が1973/1974シーズンのトニー賞でミュージカル作品賞を獲った『Raisin』のジャッド・ウォルディン。作詞はウォルディンとリチャード・エンクイストが共同で書いている。脚本はダン・オーウェンズ。プロデューサーは『It Ain’t Nothin’ But The Blues』のエリック・クレブズ。
 プレイビル記載のクレブズの解説によれば、初演は1987年のニュージャージー。で、曲を追加して2001年11月に行なったオフ・オフでの試演の好評を受けて、このオフでの公演となったようだ。

 1936年、大恐慌時代のハーレムが舞台。
 住民が集まって娯楽でやっているギャンブル(numbers game)にギャングが介入して騒ぎになる。靴磨きの少年リトル・ハムは、その渦中で翻弄されつつも、最後には周囲の助けもあって道を外さずに済む。といったような話をコミカルな味付けで描いていく。
 主人公にあんまり感情移入できなかった記憶がある。ドラマとしての面白さがいまひとつだったのだろう。

 楽曲の多くは時代設定より気持ちモダンな活きのいいジャズ・ソング。バンドは、ピアノ、パーカッション、ベース、木管、トランペットの5人編成。
 『Jelly’s Last Jam』『Smokey Joe’s Cafe』に出ていて、後者でトニー賞助演女優賞にノミネートされたブレンダ・ブラクストンのソング&ダンスが見どころのひとつ。彼女は、この後、断続的にだが、『Chicago』で長くヴェルマ・ケリーを演じることになる。

 演出エリック・ライリー、振付レズリー・ドッカリー。

 『Harlem Song』(9月23日12:00@Apollo Theater)は、『Jelly’s Last Jam』『Noise/Funk』のジョージ・C・ウルフが演出。
 なのでハーレムまで観に行った。舞台の内容も、その2作品と根本は同質。

 ハーレムの変遷を過去から現在に向けて、往時の写真/映像をバックに映したりしながら、時にインタヴュー音声なども交えつつ、時代に応じたスタイルのソング&ダンスで見せていくショウ。それは、そのまま、ブラック・エンタテインメントの歴史の回顧であると同時に、アフリカン・アメリカンの歴史の再確認でもある。
 そうした作品をアポロ劇場で観るというのは、なかなかに感慨深い体験だった。

 楽曲は、既存のものとオリジナルとが入り交じっている。
 既存の楽曲は、幕開けのL・ウルフ・ギルバート/ルイス・F・ミュアーによる20世紀初頭のラグタイム・ピアノ「Here Comes My Daddy Now」のオリジナル音源に始まって、ジミー・ランスフォードの「Well Alright Then」、デューク・エリントン/ニック・ケニーの「Drop Me Off In Harlem」、アーヴィング・ミルズ/ヘンリー・ネモ/ルーピン・ファインによるキャブ・キャロウェイの「Tarzan Of Harlem」、ハロルド・アーレン/テッド・ケーラーによるドン・レッドマンの「Shakin’ The Africann」(最後の「n」は2つで間違いなし)、クラレンス・ウィリアムズ/ヘンリー・トロイの「For Sale」、ビリー・ストレイホーンによるエリントン楽団の「Take The “A” Train」(「移民」という景でスペイン語で歌われる)、ラングストン・ヒューズ/ジェイムズ・P・ジョンソンの「Hungry Blues」、アルヴィン・コーウェンズ「Linda Brown」、ジョー・トレント/ハリー・トビアス/ニール・モレットの「Here You Come With Love」、カウント・ベイシー/リチャード・ライトの「King Joe」、サム・クックの「Shake」、パメラ・ウォリック=スミスの「Tree Of Life」。この内の何曲かにはジョージ・C・ウルフによる新たな歌詞が加えられている。
 オリジナル楽曲の作者は、ゼイン・マークあるいはダリル・ウォーターズと、ジョージ・C・ウルフの組み合わせ。
 バンドは、キーボード×2(1人はゼイン・マーク)、ギター、金管×2、木管×2、ベース、ドラムス。

 出演者は、B・J・クロスビー、クイーン・エスター(『Truly Blessed』)、デイヴィッド・セイント・ルイスを中心に、総勢16人。

 振付は、『Black And Blue』『Jelly’s Last Jam』の出演者で、後に『Avenue Q』『All Shook Up』の振付を担当することになるケン・ロバーソン。この作品の振付でドラマ・デスク賞を受賞している。

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