The Chronicle of Broadway and me #321(Tommy Tune: White Tie And Tails)

2003年1月@ニューヨーク(その7)

 『Tommy Tune: White Tie And Tails』(1月3日20:00@Little Shubert Theatre)は、リトル・シューバート劇場のこけら落とし公演だったはず。
 リトル・シューバート劇場(2015年にステージ42と改名)は、全米的な影響力を持つ劇場運営会社シューバート・オーガニゼイションが初めて建てたオフ・ブロードウェイの劇場。同社が新たな劇場を建てるのは、1928年のバリモア劇場以来だったとか。
 言ってみれば鳴り物入りでオープンしたような劇場だが、(ぎりぎりオフに分類される)席数499というオフにしては大きすぎるスケール感がよくないのか、噂に聞く劇場フィーの高さが災いしているのか、とにかく、この劇場での公演は当たらないという印象がある。

 第1弾だったトミー・テューンのこのショウも例外ではなく、予定より早く幕を下ろしている。
 とはいえ、11月26日にプレヴューを開始、12月18日に正式オープンして1月5日まで続いたのは、健闘という気がする。
 ちょうと10年前、似た趣向のワン・パーソン・ショウ『Tommy Tune Tonite!』が、やはり年越しの時期に1週間限定でブロードウェイで上演されたのだが、その感想の最後に、こう書いた。
 「この後、トミー・テューンは失速する。演出・振付(いずれも共同)の次作『The Best Little Whorehouse Goes Public』(1994年)が短命に終わり、1995年のブロードウェイ入りがアナウンスされた出演作『Busker Alley』は、脚本の手直しやテューン自身のケガ等が重なって結局ニューヨークにはやって来なかった。」
 その後、1999年にラス・ヴェガスで『EFX』というショウに出たりしているが、トミー・テューンというブランドの人気の頂点は、やはり、あのブロードウェイでのワン・パーソン・ショウの頃だったなと思う。
 それから10年の後、オフとはいえ、話題のこけら落とし公演というプレッシャーの下、実質1か月を超える公演を成り立たせたのは立派。

 『Crazy For You』のオリジナル・キャストでもあったマンハッタン・リズム・キングズという“歌と演奏と軽い踊り”の3人組(テューンとの共演は1984年から続いているらしい)、及び、木管×6/トロンボーン×3/トランペット×3/ギター×2/ベース/ドラムス/パーカッション/ピアノという編成のオーケストラをバックに、おなじみのソング&ダンスを繰り広げる、というのがショウの内容。幕間はない。

 楽曲は、アーヴィング・バーリン、コール・ポーター、ガーシュウィンズらをはじめとするグレイト・アメリカン・ソングブック系がメイン。中にフレッド・アステアとジョニー・マーサーの共作曲「The Afterbeat」が入っているのが、いかにもトミー・テューン。『Tommy Tune Tonite!』の後半の肝だった「Shanghai Lil」(アル・デュビン&ハリー・ウォーレン)の再演もある。
 ビートルズの「When I’m Sixty Four」を採り上げているのは、次の誕生日(2月28日)で64歳になるから。

 2008年から2009年にかけてボストン他で『Steps In Time: A Broadway Biography In Song And Dance』というショウを上演した後、トミー・テューンが再びニューヨークに登場するのは2015年2月。シティ・センター「アンコールズ!」シリーズの『Lady, Be Good!』の舞台だったが、残念ながら観逃している(この年、トニー賞の特別功労賞を受賞)。

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