The Chronicle of Broadway and me #513(The 39 Steps)

2008年6月@ニューヨーク(その2)

 『The 39 Steps』(6月4日14:00@Cort Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<今回観た唯一のオン新登場作品が、イギリス産のプレイ『The 39 Steps』
 ミュージカルでもないのに、なぜ観たかと言うと、プレイビル・オンラインに「コメディ」と書いてあったから。だって、『三十九夜』(原作小説の邦訳タイトルから言えば『三十九階段』だろうが、このプレイはヒッチコック版映画が元だと謳っているので)と言ったらスリラーでしょ。それがコメディってんだから思わず観たくなる。

 これが期待に違わぬ面白さ。4人しかいない出演者が、簡易なセットの駆使(例えばトランク4つだけで「列車内」から「列車の屋根上」までを表現)と、驚くべき早替わり(例えば舞台上の2人の役者が帽子の取替えだけで瞬時に5役を演じ分ける)で、物語をスピーディに運ぶ。
 バカバカしくも見事な脚本・演出のアイディアと、役者たちの鍛えられたヴォードヴィル的芸に支えられた、抱腹絶倒のナンセンスな全2幕。観て損なし。>

 「ヒッチコック版映画が元だと謳っている」というのはタイトルの前に付いた“Alfred Hitchcock’s”の惹句を指す。ただし、正規のクレジットのどこにもヒッチコックの名前はない。
 ジョン・バカンの同名小説を原作に、サイモン・コーブルとノービイ・ダイモンが出演者4人のプレイに仕立てて1995年に上演。それを2005年にパトリック・バーロウが脚色し、手直しを加えながらウェスト・エンドで2006年に幕を開けた。というのがブロードウェイに来る前の流れのようだ。ちなみにウェスト・エンド版は2015年まで続いたらしい。
 このブロードウェイ版の演出はウェスト・エンド版と同じくマリア・エイトキン。
 アイディアに満ちた装置デザイン(衣装も)はピーター・マッキントッシュ。

 主人公を演じたチャールズ・エドワーズはウェスト・エンド版のオリジナル・キャスト。残る3人の出演者は、アーニー・バートン、ジェニファー・フェリン、クリフ・サウンダーズ。