The Chronicle of Broadway and me #648(The Magdalene/Voca People/The Best Is Yet To Come: The Music Of Cy Coleman)

2011年6月~7月@ニューヨーク(その7)

 オフの3作品について、まとめて。

 『The Magdalene』(6月28日19:00@Theatre At St. Clement’s)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<福音書に出てくるマグダレナ(マグダラ)のマリアを中心に据えたキリストの話。
 父の虐待から逃れたマリアが、キリストと出会って目覚め、キリストの信頼を得て布教活動の中心となっていき、それが男性使徒たちの嫉妬を生んで集団に不和が生まれ……といった物語で、どうやら、これまで軽視されてきたマリアの存在の意味を改めて問い直そう、というのが眼目のようだ。
 階段客席から見下ろす舞台には、中央に岩(を模した大道具)が置かれてある他は、左右と正面の壁際に階段が誂えられているのみ。そうしたシンプルな装置の中で、極めて真面目に展開されるキリスト教の話(と楽曲)は、あまり面白いとは言い難い。
 マリアの描かれ方にも魅力が感じられないし。キリスト教を理解していれば違って見えるのかもしれないが、こればっかりは何とも……。>

 作曲ジェイムズ・オルム、作詞・脚本J・C・ハンリー&ジェイムズ・オルム。
 演出リチャード・バーク。クリエイティヴ・コンサルタントという名目でリチャード・モルトビー・ジュニアが関わっている。
 

 『Voca People』(6月29日20:00@Westside Theatre(Upstaires))について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<登場する8人のキャストの声だけで楽曲が奏でられるア・カペラ・ミュージカル。
 と書くと、ありふれた感じがするが、変わっているのは、全員が『Tubes』で知られるブルー・マンの“白”版の風情で真っ白メイクなこと。音楽をエネルギー源とする異星人たちが音楽で地球に愛をもたらそうとする、という設定だ。ま、逆に言えば、そういう設定でない限り、ずっと歌い続ける理由がなくなるのだが。
 ヒューマン・リズム・ボックスからオペラ的な唱法に到るまでの様々な技術と声質と声域を有するキャストが集められていて、彼らが、まずは広い世代に知られているであろうヒット曲から入り、映画音楽特集をやり、クラシックの名曲をやり、ヒップホップも見事にこなし、極め付けにクイーンの「Bohemian Rhapsody」をギター・ソロまで含めてまるごと完全コピーして聴かせるのだから、まあ一見(一聴)に値するのは間違いない。しかも、8人のキャラクター設定や、客いじりも含めた脚本(ギャグ)もよくできていて楽しめる。
 ぜひに、とは言わないが、音楽が好きなら一度は足を運んでもいい。>

 確か来日公演があったと思う。
 創案・演出リオール・カルフォ。音楽監督・編曲シャイ・フィッシュマン。
 

 『The Best Is Yet To Come: The Music Of Cy Coleman』(7月3日19:00@Theatre A/59E59)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<小さな劇場なのに出演者が豪華。
 アルファベット順に、デイヴィッド・バーナム、サリー・メイズ、ハワード・マッギリン、リリアス・ホワイト、レイチェル・ヨークというブロードウェイのオリジナル・キャスト・クラスがズラリ。加えて、ピアノ演奏+歌に音楽監督も兼ねたビリー・ストリッチ。
 内容は、サブタイトルにもあるように、作曲家サイ・コールマンの楽曲によるショウで、構成・演出は名作『City Of Angels』の作詞でコールマンと組んだデイヴィッド・ジッペル。
 なんと贅沢な。こうなると、楽曲の内容に沿ってコント的につないでいくといった構成の妙があって……とか言ってないで、楽曲のよさと役者のうまさを黙って楽め、と。そういうショウ(笑)。>

 キャスト・レコーディングが残されていないのが残念。

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