The Chronicle of Broadway and me #1018(A Musical About Star Wars/Romeo & Bernadette: A Musical Tale of Verona and Brooklyn/The Office! A Musical Parody/Paradice Lost)

2020年1月~2月@ニューヨーク(その10)

 オフのミュージカル3本とストレート・プレイ1本について。
 

 『A Musical About Star Wars』(2月1日20:15@St. Luke’s Theatre)は、オフにときどき出てくる、少人数で壮大なスケールの物語を展開しようとして笑いをとるスタイルのミュージカル。
 この作品の出演者は3人。着ぐるみも含む衣装や、いかにも手作りめいたミニチュアやセットを駆使して、スター・ウォーズ世界の再現に励む。その健気さが笑える。
 もっとも、こちらは、そこまでのスター・ウォーズ・ファンではないので、楽しさもそこそこなのだが。

 作曲・作詞ビリー・レック。脚本トム・ダンゴラ、テイラー・クルーソア、スコット・フォスター。
 演出マイケル&トム・ダンゴラ。振付アレックス・リングラー。

 こうした作品の定石通り、脚本を書いたテイラー・クルーソアとスコット・フォスターは出演もしている。もう1人の出演者はエミリー・マクナマラ。
 

 『Romeo & Bernadette: A Musical Tale of Verona and Brooklyn』(2月2日15:00@Mezzanine Theatre/A.R.T. New York Theatres)は、シェイクスピア『Romeo And Juliet』のロミオが実は死んでおらず、400年の眠りから覚め(時は1960年)、たまたまヴェローナに来ていたジュリエットに激似のバーナデットに恋をし、彼女を追いかけてブルックリンに行くことで起こる騒動話。なぜ、そんな話になったかと言うと、地域劇団の『Romeo And Juliet』公演を観て、その結末が悲惨すぎると嘆く恋人のために、新たに考え出した改訂版だから。
 虚構と現実が(って全部虚構なんですが)綯い交ぜになるあたりも含めて、なんだか『& Juliet』に似てなくもないが、こういうアイディアって昔から、いろんな人が考えてきたんだろうなと思う。
 それはともかく、実はバーナデットの父親がマフィアのボスで、一方ブルックリンに着いたロミオがたまたま親友になる相手の親が別の組織のボスで、ロミオはまたもや勢力争いに巻き込まれる。という展開は、うまく考えられている。なにしろ、みんなイタリア系なわけだから。

 このミュージカルのもう1つの特徴は、楽曲がイタリアでよく知られるクラシカルな歌の替え歌になっているところ。例えば「Torna A Surriento」(邦題:帰れソレントへ)とか。だからこその1960年という時代設定なのだろう。
 作曲者として名前がクレジットされているのは、エンリコ・カニーオ、ロドルフォ・ファルヴォ、サー・フランチェスコ・パオロ・トスティ、トンマーゾ・ジョルダーニ、ルッジェーロ・レオンカヴァッロ、ジャンバッティスタ・デ・クルティス、マリオ・コスタ、ジョアキーノ・ロッシーニ、ヴィンチェンツォ・ベッリーニら。面白い。
 作詞と脚本はマーク・サルツマン。
 演出ジャスティン・ロス・コーエン。

 珍作『Johnny Guitar: The Musical』の主演者ジュディ・マクレインが出ていた。
 


 『The Office! A Musical Parody』(2月2日20:00@Jerry Orbach Theater)は、タイトルにあるように、『The Office』というTVドラマのパロディ・ミュージカル(らしい)。
 元のTVドラマは、まずBBCで2001年~2002年にオンエアされて「社会現象を巻き起こし」(ウィキペディア)、アメリカでは権利を買い取ったNBCによるリメイク版が2005年から2013年までオンエア。「製紙会社の支社を舞台に、無神経な上司によって振り回されるオフィスの日常をドキュメンタリー・タッチで描いたシニカルなシチュエーション・コメディ番組」だったとか。

 いや、これが酷かった。何が酷いって、パロディなのに、そのパロディ具合(っつってもネタ元を知らないから、あえて言えばコメディ具合か)を享受する以前の問題として、役者の演技が(ニューヨークの舞台ではまず考えられないぐらいに)素人っぽくて、まるで笑えない。セットも(単に予算の問題としか思えない感じで)超チープでアイディアもないし。もしかしたら、その素人っぽさもパロディの内だったのかもしれないが……いや、どうなんだろう?
 おかげで、楽曲の出来がどうとか、考える余裕もなかった(笑)。

 作曲・編曲アッサフ・グレイズナー、作詞・脚本ボブ&トブリー・マックスミス。
 演出・振付ドナルド・ガーヴェリック。
 

 『Paradice Lost』(2月5日14:00@Theatre Three/Theatre Row)は、その名の通り、ミルトンの『失楽園』の舞台化。ミュージカルではなくストレート・プレイ。
 アダムとイヴを間に挟んでの、堕天使ルシファーと大天使ガブリエルの闘いが、小規模ながらも凝った舞台装置(ハリー・フェイナー)の中、やはり凝った作りの神話に現代性を加味した衣装をまとって、コミカルでありながら意外なほど重厚なタッチで展開される。そんな不思議な感触の作品。

 ルシファー役デイヴィッド・アンドリュー・マクドナルド(『Rocky』)、ガブリエル役メル・ジョンソン・ジュニア(『Jekyll & Hyde』『Kiss Me, Kate』)。ルシファーの娘シン役でアリソン・フレイザー(『Romance/Romance』『The Secret Garden』『Gypsy』『First Daughter Suite』『Dear World』)も出ていた。

 脚本トム・デュラック。
 演出マイケル・パーヴァ。

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