The Chronicle of Broadway and me #328(Radiant Baby)

2003年3月@ニューヨーク(その5)

 『Radiant Baby』(3月9日14:00@Newman Theater/Public Theater)は、早逝した画家キース・へリングの伝記的ミュージカル。元になっているのは、ジョン・グルーエンの書いたへリングの公式伝記。1958年生まれのへリングは、1990年にエイズ関連合併症で亡くなっている。
 タイトルの「Radiant Baby」は、1982年、へリング初の個展で配られたステッカーに描かれた「光輝く赤ん坊」のこと。へリングの代表的なモチーフと言われる。

 「楽曲も装置もポップで勢いがある。今オフでいちばんホットな舞台かも。狙っているのは第2の『Rent』か。」と、観劇当時の概観に肯定的に書いてある。その割には、複数の子役が出ていたこととポップな雰囲気(装置や衣装)以外のことは、あまりよく覚えていない(苦笑)。

 作曲はデブラ・バーシャ(2016年の日本翻訳公演関連の情報では「デボラ」と表記してあるようだが、「Debra」は「デブラ」だろう)。この作品でジョナサン・ラーソン・パフォーミング・アーツ・ファウンデーション・アワード(現ジョナサン・ラーソン・グラント)を得ているから、第2の『Rent』という印象はあながち間違いでもないようだが。
 作詞はアイラ・ガスマン(『The Life』の原案・作詞・脚本)、スチュアート・ロス(『Starmites』の脚本、『Forever Plaid』の脚本・演出・振付)、それにデブラ・バーシャ。脚本はスチュアート・ロス。演出はジョージ・C・ウルフ(『Jelly’s Last Jam』『Noise/Funk』『The Wild Party』)。振付のファティマ・ロビンソンはミュージック・ヴィデオ関係の仕事でこの頃ひとつのピークを迎えていた人(前年にMTVミュージック・アワードの最優秀振付賞受賞)。
 人材が揃っている上に、演出のジョージ・C・ウルフはプロデューサーでもあり、この翌年までパブリック・シアターの芸術監督だった人だから、ある意味、肝入りの企画でもあったと思う。装置やプロジェクションもそれなりに凝っていたし、ブロードウェイ進出を目指していたのでは? という気がしないでもないが、どうなんだろう。

 キース・へリング役は、後に『Jersey Boys』のブロードウェイ・オリジナル・キャストとしてボブ・ゴーディオを演じるダニエル・ライカード(リチャードではありません)。
 『Kinky Boots』でスターになるビリー・ポーターも複数の役で出ていた。