The Chronicle of Broadway and me #342(Forbidden Broadway: 20th Anniversary Celebration)

2003年7月~8月@ニューヨーク(その5)

 『Forbidden Broadway: 20th Anniversary Celebration』(8月3日19:30@Douglas Fairbanks Theatre)について旧サイトに書いた感想です。

メラニー・グリフィス=ロキシーの『Chicago』観劇の3日後、オンの公演がほとんどない日曜の夜に久々(4年3か月ぶり)に『Forbidden Broadway』を観に行ったのは、その『Chicago』の変貌ぶりを扱っているかどうかを知りたかったから。と言うより、あきれた気持ちを誰かと共有したかったから、というのが正直な気持ち。
 で、さすがにミュージカル・パロディの老舗舞台。ちゃんと期待に応えてくれました。

 長く、あちこちのレストラン・シアターを放浪していたが、“20周年記念版”と銘打たれた今ヴァージョンは、オフの正規の劇場での公演となっている。
 だからと言って、かしこまったりすることはもちろんなく、相変わらずヤンチャにやってくれているのはうれしい限り。

 さて、肝心の『Chicago』ネタだが、第1幕の初めの方に登場。
ミズ・メラニー・グリフィス! というアナウンスをきっかけに、舞台下手から冴えない表情のロキシーらしき女性が、ちょうど「Me And My Baby」を思わせるように男性2人に挟まれて姿を現す。しかし、本編と違って、足元がふらついている彼女は、両肘を男性たちに支えられてようやく歩いている。そして、歌声はほとんど聴き取れないほど弱々しい……。
 素早いネタの仕込みと的確な表現に溜飲を下げたひとコマ。

 『Forbidden Broadway』を観るたびに思うのは、作者(ジェラード・アレッサンドリーニ)はミュージカルが本当に好きなんだな、ということ。そして、対象となるミュージカル作品の本質を捉える目の確かさ。
 彼の繰り出してくるパロディの数々は、単なる知ったかぶりでも、高みからの揶揄でもなく、僕らと同じミュージカル・ファンとしての視線で愛情を持って作られている。しかも、オフからオンをうらやましげに見上げるような無前提の憧れや劣等感もない。だから笑いにイヤな感じがなく、何度観ても心から楽しめるのだ。
 今回の『Chicago』ネタにしたところで、あきれてはいても、メラニー・グリフィスに対する悪意は感じられない。

 劇場が大きくなっても、演じているのが男女2人ずつの計4人なのは同じ。
今 回は、女性陣が、ドナ・イングリッシュとヴァレリー・フェイガン、男性陣が、エリック・ガットマンとマイケル・ウェスト。
 いずれも豊富な経歴の芸達者な人たちだが(実際、モノマネから本格的な歌のうまさまで、芸の幅広さには驚くばかり)、個人的には、同じダグラス・フェアバンクス劇場でやっていた『When Pigs Fly』の主演だったウェストと、1993年1月に観た『Ruthless!』の主演だったイングリッシュに思い入れがある。
 2作品ともユニークなアイディアのあるオフ作品だったが、その中でユニークな個性を発揮して舞台を引っ張っていた2人。もちろん、このロングラン作品の中で彼らの芸を観るのも楽しいのだが、もう1度、オリジナル作品の舞台で観てみたいと思わずにいられない。

 『Chicago』ネタはグリフィス降板と共に終わるだろうが、ミュージカル・ファンなら必ず楽しめるネタ満載。時間に余裕が出来たら1度はご覧になることをオススメします。>