The Chronicle of Broadway and me #261(Chicago[10]/Fosse[4])

2001年2月@ニューヨーク(その2)

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 『Chicago』(2月10日14:00@Shubert Theatre)10回目の観劇。旧サイトに書いた感想です。

<約1年9か月の間ご無沙汰した『Chicago』を2月に再び観たのは、ちょうどビビ・ニューワースが復帰していたから。
 ニューワースのヴェルマを観るのは、1998年9月28日のこの特別公演以来。正規の舞台で言えば同じ年の6月13日以来だから、実に2年9か月ぶりになる。

 [このリヴァイヴァル『Chicago』のような10年に1本ともいうべき舞台の場合、その充実度が非常に高い分、ちょっとしたバランスの乱れで並のヒット作程度の印象になってしまうということだ。それでも実は、けっこうよくできた舞台なのだが、最初の凄みを知っていると物足りなさを感じてしまう。
 特に『Chicago』は、役者に関しては、主役4人の個性と技が傑出していて、なおかつアンサンブルのダンサーたちのレヴェルも高いという、個人芸の集成のような舞台だったから、それを維持していくのは大変なことだろうとは思っていた。]

 1998年3月21日分の観劇記からの引用だが、『Chicago』のキャストにことさらこだわるのは、そんな理由からだ。
 2001年2月10日の主要キャストは次の通り。
 ロキシー/ベル・キャラウェイ、ヴェルマ/ビビ・ニューワース、ビリー・フリン/クラーク・ピーターズ、エイモス・ハート/P・J・ベンジャミン、ママ・モートン/マーシャ・ルウィス、メアリー・サンシャイン/R・ビーン。
 ニューワースの他にオリジナル・ママ・モートンのルウィスも復帰(と言うか、もしかしたら彼女の場合は一時的に抜けていたというニュアンスなのかもしれないが)。最初に舞台袖で客席に向かって挨拶する役のジョン・ミネオも戻っていたりして、印象としてオリジナル度が高い。
 実際には、この日、舞台に立っていたオリジナル・キャストは、以上の3人に加えて、マイケル・クバラ、メイミ・ダンカン・ギブズ(本来の女囚役に復帰)、ジム・ボーステルマン、デイヴィッド・ウォーレン・ギブソン、それにブロードウェイ開幕時はアンダースタディだったミシェル・ロビンソンの計8人。舞台に上がるのが19人だから、開幕後4年以上経っている作品にしては多い方だろう。こうして“なじみの顔ぶれ”を再び集めたのは、やはり、ある種の“引き締め”をねらってのことなのだと思うが、結果は、戻ってきた主要キャスト2人を中心にとてもバランスがよく、(既視感も手伝ってはいるにしろ)安心して観ていられる確かな舞台に仕上がっていた。

 が、そうした“オリジナル・キャストのありがたさ”以上に、今回はビビ・ニューワースの力を再認識した。
 [この人の魅力が今一つわからない] とニューワースについて書いたのは1996年5月4日シティ・センターでの観劇記でだが、こちらに見る目がなかったってことがあるにしても、彼女も『Chicago』の舞台を経て一皮むけたのではないだろうか。それ以前に観たニューワースの舞台は、リヴァイヴァルの『Damn Yankees』だけだが(その前に彼女はリヴァイヴァル版『Sweet Charity』でトニー賞を獲ってもいたわけだが)、彼女の演じるローラは――漠然とした言い方で悪いが――決め手に欠けた。うまいダンサーではあるのだが、何か迫ってくるものがなかった。そのイメージは、初めて『Chicago』を観た時にも変わらなかった。
 が……。おそらくニューワースにとっても最高のヒット作であるに違いないリヴァイヴァル版『Chicago』の屋台骨を背負うことで、彼女の中に何かが生まれたのだと思う。最近の彼女は明らかに“超”のつく一流のレヴェルに足を踏み入れている。
 そんなニューワースの話を次の『Fosse』のところでするのだが、その前に……。

 この回のロキシー役ベル・キャラウェイは来日公演のロキシー役者。巡り巡ってのブロードウェイ登場だが、あの来日公演の時に感じた彼女のうまさはブロードウェイの舞台でも立派に映え、ニューワースの向こうを張って見劣りしなかったことを報告しておく。
 それから、役者の質のレヴェルはけっこう維持されているものの、観客の質はかなり変化していて、受けるところが開幕当初とはずいぶん違ってきていることも書き添えておく。>

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 『Fosse』(2月11日19:00@Broadhurst Theatre)4回目観劇の感想は先行してアップしてあります。こちらです。

 なお、上記『Chicago』の感想の終盤に、「ニューワースの話を次の『Fosse』のところで」って書いてありますが、それは次回、2001年4月の感想になります。お楽しみに(笑)。