The Chronicle of Broadway and me #287(The Last Five Years)

2002年3月@ニューヨーク(その5)

 『The Last Five Years』(3月24日19:00@Minetta Lane Theatre)は、『Parade』でトニー賞楽曲賞を獲ったジェイソン・ロバート・ブラウン(作曲・作詞)の野心作。

 男女のカップルが出会って別れるまでの5年間を、男性は時間軸に沿って出会いからたどり、女性は逆に別れから遡っていく、という凝った構成。
 このことは、映画化もされ、日本での上演も行なわれた今ではよく知られているが、当時、できるだけ予備知識なしで観劇することを旨としていた極東からの異邦人にとっては、実にわかりにくい作りだった。なので、残念ながら観た当初は、なんだか入り組んだ面倒くさい男女の恋愛話みたいだなあ、ぐらいにしか理解できなかった。

 楽曲はヴァラエティ豊かで魅力的。ジェイソン・ロバート・ブラウン作品の中でも一、二を争う充実度だと思う。
 劇場でのピアノ/指揮(編曲も)はジェイソン・ロバート・ブラウン自身。バンドは他に、チェロ/パーカッション/セレステ(カリンバ)、チェロ/パーカッション、ヴァイオリン/パーカッション、アコースティック・ギター、エレクトリック・ベースという編成。
 役者もよかった。男性ジェイミー役が前年のシカゴでの世界初演から引き続きのノーバート・レオ・バッツ(『Thou Shalt Not』)、女性キャシーがシェリー・レネ・スコット(『Aida』)という旬な2人。ちなみに、この2人は2005年の『Dirty Rotten Scoundrels』で再び共演する。
 演出は、1995年のブラウン作品『Songs For A New World』(未見)と同じくデイジー・プリンス。歌で物語が進んでいくので脚本のクレジットはない(つまり実質ブラウンの脚本)。

 2013年にジェイソン・ロバート・ブラウン自らの演出によりオフでリヴァイヴァルする。そちらは、予備知識があって観たこともあり、せつないストーリーがよくわかった。という理由からなのか、そちらの方が面白かった気がしているが、本当のところはどうなんだろう。
 そのリヴァイヴァルについては、2013年3月の項で改めて。→こちら