The Chronicle of Broadway and me #883(Charlie And The Chocolate Factory)

2017年3月~4月@ニューヨーク(その4)

 『Charlie And The Chocolate Factory』(3月29日20:00@Lunt-Fontanne Theatre)についての観劇当時の感想。配信音楽誌「ERIS」19号(2017年6月)に書いた原稿からの抜粋(一部編集)です(<>内)。

『Charlie And The Chocolate Factory』『Groundhog Day』同様、映画ゆかりでロンドンから来た作品だが、演出家が替わって別ヴァージョンとなった模様(サム・メンデス演出のロンドン版は未見)。
 原作は『Matilda The Musical』と同じくロアルド・ダールの小説。でもって、2度映画化されているが、原題並びに邦題が錯綜しているので、ここで整理しておくと…。

 小説→『チョコレート工場の秘密』(Charlie And The Chocolate Factory)
 1971年映画→『夢のチョコレート工場』(Willy Wonka & The Chocolate Factory)メル・スチュアート監督(当時、日本では劇場未公開。TV放映時に邦題が付いたらしい。ホール上映の際に『チョコレート工場の秘密』の邦題が付いていたとの情報もある)
 2005年映画→『チャーリーとチョコレート工場』(Charlie And The Chocolate Factory)ティム・バートン監督

 映画2本のうち、1971年版がミュージカル仕立てで、アカデミー賞楽曲賞にノミネートされている。楽曲作者はアンソニー・ニューリーとレズリー・ブリカッスというイギリス・ミュージカルのゴールデン・コンビ。サミー・デイヴィス・ジュニアが歌って全米1位になった「The Candy Man」は、この映画のナンバーだ。

 その「The Candy Man」を含む4曲が今回の舞台でも使われているが、残りの楽曲はマイク・シャイマン(作曲・共同作詞)とスコット・ウィットマン(共同作詞)という『Hairspray』『Catch Me If You Can』のコンビが書いている。ちなみに、ブロードウェイ版の演出も、その2作で一緒だったジャック・オブライエン。
 で、どうやら、映画版の4曲はウェスト・エンド(ロンドン)版にはなく、ブロードウェイ上演にあたって加えられることになった模様。これ即ち、彼の地で3年7か月のロングランを達成したにもかかわらず、そのままではニューヨークでは当たらないと踏んで、演出家を替え、楽曲を加えたわけで、そのあたりに今回の舞台の問題が見え隠れする。
 まあ、ウェスト・エンド→ブロードウェイに限らず、ブロードウェイ→ウェスト・エンドの場合でも手を加えるのは茶飯事。というのも、同じ英語圏とはいえ英米間には、細かいところでは言葉遣いから大きなところでは人生観まで文化の違いがあるからで、さらには、ミュージカルを観る層の違いというか、ミュージカルという文化に対する接し方の違いもあるように見える。
 が、そうしたことを念頭に置いても、かつてのヒット映画から4曲を持ってくるというのは、かなりのテコ入れな感じ。実際、見終わって印象に残るのは、それら聴き馴染んだ楽曲ばかりだ。

 目新しさがなければ価値がないとは言わないが、1971年映画版の印象が鮮烈なだけに、舞台版ならではの”何か”、できれば映画版では表現できない強力なショウ場面が欲しかったところだ。
 チョコレート工場内の様々な仕掛けを、むやみにプロジェクションや大がかりな装置を使わずに、あえてローテクな手段を中心にして表現している辺りは好感が持てるが、楽曲の既聴感と相まって、全体にこぢんまりした印象の舞台になったのは否めない。>

 改めてオリジナル・キャスト盤を聴き直すと、舞台版のためのオリジナル楽曲も悪くない。が、まあ全体の印象は変わらない。

 脚本デイヴィッド・グレイグ。
 振付ジョシュア・バーガッシー(『Wild About Harry』『On The Town』『Gigi』)。

 ウィリー・ウォンカ役クリスチャン・ボール(『Jesus Christ Superstar』『Elegies: A Song Cycle』『Monty Python’s Spamalot』『Legally Blonde: The Musical』『Peter And The Starcatcher』『Something Rotten!』『Falsettos』)。観た回のチャーリー役(トリプル・キャスト)は後に『Mrs. Doubtfire』に出るジェイク・ライアン・フリン。
 他に、ジャッキー・ホフマン( 『Hairspray』The Kvetching Continues/Jackie Hoffman『Xanadu』『The Addams Family』『On The Town』)、エミリー・パジェット(『Grease』『Side Show』『Bright Star』『Sweet Charity』)、1972年初演『Pippin』でピピンを演じたジョン・ルービンスタイン、といった面々。

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