[Tony2004] 予想/結果と感想(season summary)

 2003/2004シーズンのトニー賞の予想と結果を再録します(過去シーズンについてはこちら→1997/19981998/19991999/20002000/20012001/20022002/2003)。
 旧サイトに別々に書いた「予想」と「結果と感想」とを同時にアップしますので、全体に若干編集してあります。ただし、予想や感想の内容には手を加えていません。

 まずは予想と結果の一覧(◎☆は予想時のマーク。ニュアンスは、◎本命=審査員が投票しそう、☆対抗=案外これが獲るかも/獲ってくれないかな、といった感じ)。その後の<>の中が、当時の予想の根拠と、結果についての感想です。

[作品賞]
Avenue Q ☆ →受賞
Caroline, Or Change
The Boy From Oz
Wicked

[リヴァイヴァル作品賞]
Assassins ◎ →受賞
Big River
Fiddler On The Roof
Wonderful Town

[主演女優賞]
Kristin Chenoweth Wicked
Stephanie D’Abruzzo Avenue Q
Idina Menzel Wicked →受賞
Donna Murphy Wonderful Town
Tonya Pinkins Caroline, Or Change

[主演男優賞]
Hunter Foster Little Shop Of Horrors
Hugh Jackman The Boy From Oz ◎ →受賞
Alfred Molina Fiddler On The Roof
Euan Morton Taboo
John Tartaglia Avenue Q

[助演女優賞]
Beth Fowler The Boy From Oz
Isabel Keating The Boy From Oz
Anika Noni Rose Caroline, Or Change ◎ →受賞
Jennifer Westfeldt Wonderful Town
Karen Ziemba Never Gonna Dance

[助演男優賞]
John Cariani Fiddler On The Roof
Michael Cerveris Assassins →受賞
Raul Esparza Taboo
Michael McElroy Big River
Denis O’Hare Assassins

[演出賞]
Joe Mantello Assassins →受賞
Kathleen Marshall Wonderful Town
Jason Moore Avenue Q
George C. Wolfe Caroline, Or Change

[振付賞]
Wayne Cilento Wicked
Kathleen Marshall Wonderful Town ◎ →受賞
Jerry Mitchell Never Gonna Dance
Anthony Van Laast and Farah Khan Bombay Dreams

[楽曲賞]
Boy George Taboo
Robert Lopez and Jeff Marx Avenue Q ◎ →受賞
Stephen Schwartz Wicked
Jeanine Tesori and Tony Kushner Caroline, Or Change

[脚本賞]
Winnie Holzman Wicked
Tony Kushner Caroline, Or Change
Martin Sherman; Nick Enright(original book) The Boy From Oz
Jeff Whitty Avenue Q ☆ →受賞

[編曲賞]
Paul Bogaev Bombay Dreams
William David Brohn Wicked
Michael Starobin Assassins ☆ →受賞
Larry Hochman Fiddler On The Roof

[装置デザイン賞]
Robert Brill Assassins
Ralph Funicello Henry IV(play)
Eugene Lee Wicked ◎ →受賞
Tom Pye Fiddler On The Roof

[衣装デザイン賞]
Jess Goldstein Henry IV(play)
Susan Hilferty Wicked ◎☆ →受賞
Mike Nicholls and Bobby Pearce Taboo
Mark Thompson Bombay Dreams

[照明デザイン賞]
Jules Fisher and Peggy Eisenhauer Assassins ☆ →受賞
Brian MacDevitt Fiddler On The Roof
Brian MacDevitt Henry IV(play)
Kenneth Posner Wicked

★予想

[作品賞]『The Boy From Oz』以外の 3作の争い。
 今シーズンのブロードウェイ登場作の特徴は、オフからの移行作が多いこと。『Avenue Q』『Caroline, Or Change』はオフでの評判を背景に間を置かずに移行したし、リヴァイヴァルも、『Little Shop Of Horrors』『Assassins』は、共に元はオフ上演作品だ。
 さらに言えば、オーストラリアからやって来た『The Boy From Oz』やロンドンからの『Taboo』も元々が大きな舞台での作品ではないようだし、ブロードウェイ作品のリヴァイヴァルである『Big River』も、今回の舞台はコンパクトにまとまっていた。
 つまり、今シーズンのブロードウェイ・ミュージカルは、質はともあれ、規模としては、こぢんまりした印象の作品が多かったのだ。
 そんな中で、作品賞有力候補3作の内、唯一オフからの移行作でない『Wicked』が、ブロードウェイらしい華やかさを理由に受賞する可能性は高い。
 個人的には深いのに軽い『Avenue Q』に1票を投じるが、けっして『Caroline, Or Change』が劣っているわけではない。

 [リヴァイヴァル作品賞]は、『Assassins』がリヴァイヴァル扱いにならなければ、『Wonderful Town』で決まりだっただろう。しかし、そうなると、『The Boy From Oz』の代わりに『Assassins』が作品賞候補に入って、そちらの混戦ぶりに拍車がかかるだけだから、ま、これはこれでよし、か。
 個人的にはチャーミングな『Wonderful Town』に1票。スティーヴン・ソンドハイムに対するニューヨーク演劇界での評価を考えて(リヴァイヴァル扱いだから楽曲賞候補にならないことも加味して)、『Assassins』を審査員のお気に入りと予想。

 『Caroline, Or Change』のトニヤ・ピンキンズが加わって、クリスティン・チェノウェスとドナ・マーフィの一騎打ちだった[主演女優賞]は、今シーズン一番の激戦区に。なにしろ、3人のトニー賞女優が、それぞれ作品の屋台骨を支える素晴らしい演技を見せているわけだから。
 とは言っても、やはり華やかな役柄のチェノウェスとマーフィの争いになるのではないか。新作の強みでチェノウェスに行く可能性が高いと読んで、ならば希望の1票はマーフィに(もちろん読みが逆だと個人的投票も逆になる)。

 一転して[主演男優賞]は迫力不足。となると、技量不足ではあっても、とにもかくにもB級作品を一応の成功に導いたヒュー・ジャックマンの熱演が評価される可能性もありか。
 変則の演技なので評価されにくいかもしれないが、個人的には、今シーズン一番の主演男優は『Avenue Q』のこの人以外にはいないと考える。

 男女共に助演賞にはノミネートされないあたりに、『Avenue Q』の役者に対する評価が見えるような気がする。

 [助演女優賞]は、この5人の中でなら若手2人か。個人票は、より難しいだろうと思われる『Wonderful Town』のボケ役アイリーンを演じた、この人に。審査員票は、『The Boy From Oz』の母親役に行く可能性もある。カレン・ジエンバは残念ながら役不足だった(役者の技量に対して役の重みが不足)。

 [助演男優賞]は、演技合戦舞台『Assassins』から3人ぐらい候補に挙がる気がしていたが、さすがに2人止まり。この2人なら、オヘアの2年連続受賞に1票。審査員票は、案外、『Fiddler On The Roof』で大いに笑いをとっていた仕立て屋役に落ち着いたりするかも。

 [演出賞]は主演女優以上に決めがたい。気分としては全員受賞。
 とりあえず、最もユニークな『Avenue Q』と最もオーソドックスな『Wonderful Town』とに振り分けたが、果たして……。

 [振付賞]は、楽しい『Wonderful Town』とシャープな『Wicked』の争い。『Never Gonna Dance』のダンス・シーンも捨てがたいが、いかんせん作品が弱すぎた。

 [楽曲賞]は、ユーモラスな佳曲の多い『Avenue Q』か、凝りに凝った『Caroline, Or Change』。実は『Taboo』も、悪くはない。

 [脚本賞]は、やりすぎとも言える努力が票を集めて『Wicked』か。
もちろん、傑作と呼べるのは『Avenue Q』

 [編曲賞]
 個人的には、アメリカ音楽の深さを踏まえつつ、作品の時制にも沿って微妙なニュアンスの変化を奏でてみせた『Assassins』に1票。審査員は『Wicked』(あるいは『Bombay Dreams』)の見かけの新しさにダマされるかも。

 [装置デザイン賞][衣装デザイン賞][照明デザイン賞]は未見のプレイ『Henry Ⅳ』に行ったらゴメンナサイ。
 観た限りでは、とりあえず、装置と衣装は『Wicked』で固い。>

★結果と感想

<受賞予想◎で7、個人的投票☆で5、の受賞。内ダブりが1(と言うか1つだけダブって印をつけた候補が獲った)。11勝3敗(笑)。

 『Avenue Q』がきちんと評価されてよかった。案の定、役者は評価されませんでしたが(笑)。
 あと、ニューヨーク演劇界はホントにソンドハイムが好きですね。『Assassins』がリヴァイヴァル作品賞、獲りました。意欲作ではありますが必ずしも成功作ではないこの作品の受賞、リヴァイヴァルのカテゴリーに入って楽曲賞で選ばれなくなったことに対するフォローの気持ちが強い、と見ます。もちろん、一見の価値は充分にある作品ですが。
 それにしても、主演女優賞には驚いた。今回、唯一の予想外。イディナ・メンゼルの能力が劣るというのではなく、今回の役での受賞はちょっと違うんじゃないか、ということですが。

 ま、ともあれ、観劇の際には、むやみに賞に惑わされることなく、自分の予感を信じて作品を選びましょう。『Wonderful Town』、終わっちゃう前にご覧になることをオススメします(笑)。>

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