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[Index](暫定)

[The Chronicle of Broadway and me](海外観劇感想)
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<ニューヨーク編>(spaces★は当該シーズンを振り返って語ったスペースの録音)
●1987/1988シーズン 1988年5月season summaryspaces01
●1988/1989シーズン 1989年5月season summaryspaces02
●1989/1990シーズン 1990年5月season summaryspaces02
●1990/1991シーズン 1991年6月&7月season summaryspaces03
●1991/1992シーズン 1992年5月~6月season summaryspaces03
●1992/1993シーズン 1992年7月1992年12月~1993年1月1993年5月~6月season summaryspaces04
●1993/1994シーズン 1994年1月1994年5月season summaryspaces05
●1994/1995シーズン 1994年9月1994年12月~1995年1月1995年3月season summaryspaces06
●1995/1996シーズン 1995年6月1995年10月1996年1月1996年5月season summaryspaces07
●1996/1997シーズン 1996年6月1997年1月1997年5月~6月season summaryspaces08
●1997/1998シーズン 1997年6月1997年9月1997年12月1998年3月season summaryTony Awardsspaces09
●1998/1999シーズン 1998年6月1998年9月~10月1999年1月1999年5月season summaryTony Awardsspaces10
●1999/2000シーズン 1999年8月1999年11月2000年1月2000年3月2000年5月Tony Awards(season summary)spaces11
●2000/2001シーズン 2000年11月2001年2月2001年4月Tony Awards(season summary)spaces12
●2001/2002シーズン 2001年10月2001年11月2002年3月2002年5月Tony Awards(season summary)spaces13
●2002/2003シーズン 2002年7月2002年9月2002年11月2003年1月2003年3月2003年5月Tony Awards(season summary)spaces14
●2003/2004シーズン 2003年7月~8月2003年10月~11月2004年1月2004年4月Tony Awards(season summary)spaces15
●2004/2005シーズン 2004年7月2004年11月2005年2月2005年4月Tony Awards(season summary)spaces16
●2005/2006シーズン 2005年9月2005年11月2006年2月2006年4月Tony Awards(season summary)spaces17
●2006/2007シーズン 2006年9月2006年11月2007年2月2007年4月Tony Awards(season summary)spaces18~19
●2007/2008シーズン 2007年7月2007年9月2007年11月2008年1月~2月2008年4月Tony Awards(season summary)spaces18~19
●2008/2009シーズン 2008年6月2008年8月2008年9月2008年11月2009年2月2009年4月Tony Awards(season summary)spaces20
●2009/2010シーズン 2009年6月2009年10月2009年11月2009年12月~2010年1月2010年3月2010年4月2010年6月Tony Awards(season summary)spaces21
●2010/2011シーズン 2010年10月2010年11月2011年1月2011年3月~4月Tony Awards(season summary)
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●2013/2014シーズン 2013年7月2013年9月2013年11月2014年2月~3月2014年3月Tony Awards(season summary)
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●2015/2016シーズン 2015年7月2015年10月2015年11月2016年3月~4月Tony Awards(season summary)
●2016/2017シーズン 2016年7月2016年9月2016年11月2017年2月~3月2017年3月~4月2017年5月~6月Tony Awards(season summery)
●2017/2018シーズン 2017年7月~8月2017年9月~10月2017年10月2017年11月~12月2018年2月~3月2018年3月~4月Tony Awards(season summary)
●2018/2019シーズン 2018年6月2018年7月~8月2018年11月2019年2月~3月2019年3月~4月2019年5月~6月Tony Awards(ノミネーションをどう見る?)Tony Awards(予想)Tony Awards(結果と感想)
●2019/2020シーズン 2019年7月2019年10月2020年1月~2月2020年2月Tony Awards(予想)Tony Awards(結果と感想)
●2020/2021シーズン (2020年3月)
●2021/2022シーズン 2022年5月~6月Tony Awards(予想)Tony Awards(結果と感想)
●2022/2023シーズン 2022年11月2022年5月~6月Tony Awards(予想)Tony Awards(結果と感想)
●2023/2024シーズン 2023年11月spacesXX

番外 Fosse(Japan tour)2001年&2002年

<ロンドン編>(spaces☆は当該渡英時を振り返って語ったスペースの録音)
1993年10月1996年12月(spaces02☆)/1999年3月(spaces03)/2000年8月~9月(spaces04)/2004年2月(spaces05~07)/2005年6月(spaces05~07)/2006年7月(spaces05~07)/2009年8月~9月(spaces08)/2011年7月2018年1月2019年6月

<ライヴ・ヴューイング編>
Life Of Pi(NTLive)

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[国内観劇感想]

※海外編と違い、観劇した作品の中から気まぐれにしか感想を書いていませんので悪しからず(一応、古→新の順/一部は旧サイトからの復刻です)
夢から醒めた夢The Sound Of Music太平洋序曲(Pacific Overtures)太平洋序曲(Pacific Overtures)[2]太平洋序曲(Pacific Overtures)[3]團菊祭五月大歌舞伎(2018)切られの与三天は赤い河のほとり/シトラスの風~Sunrise~虹のかけら~もうひとりのジュディ文楽平成30年5月公演 第二部不徳の伴侶~infelicity六月大歌舞伎(2018)雨に唄えば~Singin’ In The Rain松竹大歌舞伎 東コース(2018)ANOTHER WORLD/Killer Rouge愛聖女(サントダムール)~Sainte♡d’Amour~(ライヴ・ヴューイング)ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ七月大歌舞伎(2018)あなたの初恋探しますかぐやひめナイツ・テイル~騎士物語~NARUTO~ナルト~Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀/Killer Rouge 星秀☆煌紅エリザベート~愛と死の輪舞(ロンド)~MESSIAH(メサイア)~異聞・天草四郎/BEAUTIFUL GARDEN~百花繚乱~SMOKE蘭陵王~美しすぎる武将~On The Townアンナ・カレーニナ(ライヴ・ヴューイング)世界は一人20世紀号に乗ってMy (Left) Right Foot: The Musical新版 雪之丞変化君の輝く夜に~FREE TIME, SHOW TIMEリトル・ウィメン~若草物語~怪人と探偵カリソメノカタビラ~奇説デオン・ド・ボーモン~God Of Stars~食聖~/エクレール ブリアンFACTORY GIRLS~私が描く物語~蝙蝠の安さん八月花形歌舞伎(2020)眩耀の谷~舞い降りた新星~/Ray~星の光線~アルジャーノンに花束を人類史WELCOME TO TAKARAZUKA~雪と月と花と~/ピガール狂騒曲Nice Work If You Can Get Itイリュージョニストアナスタシア(ライヴ・ヴューイング)日本人のへそ桜姫東文章 上の巻ロミオとジュリエットJazzyなさくらは裏切りのハーモニー~日米爆笑保障条約~未練の幽霊と怪物~挫波/敦賀~アウグストゥス~尊厳ある者~/Cool Beast!!マノンエニシング・ゴーズ桜嵐記/Dream Chaser砂の女湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。さよなら、ドン・キホーテ!マドモアゼル・モーツァルトCity Hunter~盗まれたXYZ~/Fire Fever!ナイツ・テイル~騎士物語~[2]母 My Motherフィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~冒険者たち~Journey To The West~鼠小僧次郎吉/天日坊/ハナゾチル奇蹟~miracle one-way ticket~Top Hat(ライヴ・ヴューイング)The Parlorお勢、断行スワンキング/CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~てなもんや三文オペラアラバスター風の谷のナウシカ 上の巻~白き魔女の戦記ナイチンゲール新選組巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~/Fashonable Empire(ライヴ・ヴューイング)モダン・ミリー田舎騎士道(Cavalleria Rusticana)/道化師(Pagliacci)太平洋序曲(Pacific Overtures)SPY×FAMILYマリー・キューリーFINAL FANTASY Ⅹおとこたちダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才刀剣乱舞~月刀剣縁桐カラフル大逆転裁判~新・蘇る真実~rainうたのステージ/楽屋殺人事件ヴァグラント愛するには短すぎる/ジュエル・ド・パリ~パリの宝石たち~ある都市の死東京ローズ天守物語三浦半島の人魚姫/箱根山の美女と野獣ボイルド・ドイル・オン・ザ・トイル・トレイル/FROZEN HOLIDAYイザボージョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド不思議な国のエロス神々の国の首都/諜報員HOPE~THE UNREAD BOOK AND LIFE~アルカンシェル~パリに架かる虹~
 

[考察]

ボブ・フォッシー初期振付映画の謎を追ってデイヴィッド・ヤズベクの音楽ジーザスとエルヴィスのメンフィスな関係ディケンズとデイヴィスのディープな関係ロック/ポップス畑で活躍してきた大物アーティストたちのアメリカ・ミュージカル界への進出について(@1998)映像化『Cats』の出来栄え(1997年版)ロンドン産ミュージカルは“あざとい”何のためのチャリティ?「2003トニー賞授賞式」の完全版オンエアを観せてくれ!キャンペーンの軌跡2006年の“ジュークボックス・ミュージカル”の状況NYMF(ニューヨーク・ミュージカル・フェスティヴァル)って?ソンドハイムはお好き?
 

[My Favorites]

『The Producers』(video)『Chicago』(film)『Roxie Hart』(video)『Nine』(film)『Broadway』Renée Fleming(CD)『The Band Wagon』Original Motion Picture Soundtrack(CD)『The Tango Lesson』(film)『Moulin Rouge!』(film)『The Band Wagon』(film)『Easter Parade』(film)『Kiss Me Kate』(film)『Stritch』Elaine Stritch(CD)『Anastasia』1997(film)『West Side Story』2021(film)『Songs For A New World』World Premiere Recording(CD)『tick, tick…BOOM!』(film)『Theater Camp』(film)

The Chronicle of Broadway and me#1053(The Hours)

2022年11月@ニューヨーク(その11)

 『The Hours』(11月28日20:00@Metropolitan Opera House/Lincoln Center)についての感想。

 『The Hours』のチケットは、今回の渡米を決める以前の7月5日に、ダメになったらその時、と思って予約した。それぐらい観たかった作品。作曲家ケヴィン・プッツの新作オペラだ。
 大元は1998年のマイケル・カニンガムによるピュリッツァー賞受賞の同名小説で、2002年にスティーヴン・ダルドリー監督によって映画化されている(邦題:めぐりあう時間たち)。

 この舞台は、松竹METライブビューイングで2023年2月3日から2月9日まで(東京・東劇のみ2月23日まで)の上映が決まっている。予備知識なしでご覧になった方が楽しめると思うので、以下、解説、感想は必要最小限に留めます。

 舞台上には3つの時間が設定されている。それを暗示して、開演前に、3つの時代を象徴する時計(古い手巻き式時計、おそらく電池式のアナログ時計、デジタル時計)の文字盤が舞台奥に数分ごとに入れ替わりつつ大写しになる。それらの時計が示しているのは観劇日の現地時間。つまり、もうすぐ開幕、の案内も兼ねている。
 その3つの時間(及び場所)は、1923年イングランドのリッチモンド、1949年のロスアンジェルス、20世紀の終わりのニューヨーク・シティ(以上プレイビルの記述による。小説と同じで、映画とは少し違っている)。
 リッチモンドにいるのは小説家ヴァージニア・ウルフ。彼女の人生観と彼女が執筆中の小説「Mrs. Dalloway」(ダロウェイ夫人)とが、他の2つの時間に生きる女性たちの人生に大きな影を落とす。
 ロスアンジェルスにいるのは第2子を妊娠している主婦ローラ。ニューヨークにいるのは友人の小説家の受賞祝いを準備する編集者クラリッサ。

 説明できるのは、このぐらいでしょうか(笑)。小説や映画とは違い、3つの時間を文字通り同時進行的に見せていくことができ、それが緊張感を生んで面白いのが舞台版の特徴かと。
 1つだけ先走って書かせていただくと、ある謎が解けた後、最後に3つの時間が1つになる。その瞬間には息を飲みます。

 3つの時間を生きる女性たちを演じるのは、ジョイス・ディドナート(ヴァージニア・ウルフ)、ルネ・フレミング(クラリッサ)、ケリ・オハラ(ローラ)。この3人が揃う舞台を観ないわけにはいきませんでした。
 他に、カイル・ケテルセン、キャスリーン・キム。コーラス隊とダンサー陣が開幕直後から大活躍。

 ケヴィン・プッツの音楽は繊細かつ緊密。情熱を秘めつつ感情に流されない理知をも感じさせるもの。
 台本はジョン・カンダーと組んで『The Landing』『Kid Victory』の作詞・脚本を手がけたグレッグ・ピアース。
 演出のフェリム・マクダーモットはイギリス出身で、METではフィリップ・グラス作品『Satyagraha』『Akhnaten』『The Enchanted Island』を、ブロードウェイでは『The Addams Family』を手がけている。
 指揮は音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが自ら。

★METライブビューイング『めぐりあう時間たち』プロモーション映像はこちら

The Chronicle of Broadway and me #1016(Agrippina)

2020年1月~2月@ニューヨーク(その8)

オペラハウス前のポスター

 『Agrippina』(2月6日19:30@Metropolitan Opera House/Lincoln Center)についての観劇当時の感想。
 

 『Porgy And Bess』に続いて4月にMETライブビューイングに登場するのが、ヘンデルのオペラ『Agrippina』。陰謀渦巻くローマ帝国の物語を、現代感覚あふれるブラック・コメディに仕立てた面白い作品。
 現地での観劇を元に、こちらに記事を書きました。読んで興味を持たれたら、ぜひ字幕付きでお楽しみください。

 [追記]

 上掲リンク先のMEN’S Precious WEB版の記事をブログ仕様にして以下に転載します(<>内)。
 METライブビューイングでの上映を前提に「辛辣でコミカル!視覚的にも面白いMET新登場オペラが字幕付きで楽しめる!」のタイトルで2020年2月に公開されていたものです。

<以前、紹介したジョージ・ガーシュウィンの『Porgy And Bess』に続いて、METライブビューイングに4月中旬に登場するのが今回紹介するヘンデルのオペラ『Agrippina』だ。

 幕が上がると舞台中央に出てくるのが、巨大なチーズを切り分けたかのような黄色い塊。背の部分が階段状の斜面になっていて、その頂上部分に肘掛けの付いたローマ皇帝の椅子が据えられている。そこに自分の連れ子ネロを座らせたい、というのが現皇帝の妻アグリッピーナの野望。その実現のために陰謀を巡らし……。
 18世紀初頭にイタリアで作られたヘンデルのオペラ『Agrippina』は、そんな話。ローマ帝国を舞台にしているが、初演当時のローマ教皇を揶揄したとも言われているという、ブラックな政治喜劇。その精神は現代にも充分すぎるほど通じるもので、欲望のままに動く登場人物たちの姿は、今のアメリカなら誰、日本なら誰、と具体的にダブって見えてきたりもするほど。展開も快調で、観ていて飽きることがない。

 ヘンデル(作曲)のオペラ、と言われても、オペラ通でない者にとってはピンと来ないが、初演当時は大人気の作品だったらしい。実際、音楽的にも聴きどころが多く、凝らされた技巧も楽しい。にもかかわらず、ヘンデル没後、歴史の彼方に置き去りにされてしまっていた、というからクラシック世界の人気も移ろいやすいのか。それが20世紀になって再発見され、新演出による様々な上演が注目を浴びてきている、というのが『Agrippina』の今。歌舞伎で言えば、毎年1月に菊五郎劇団が国立劇場で上演する復活狂言のような存在だ。

 今回のヴァージョンも、MET初演にして新演出。演出家はMETでも実績のあるスコットランドのデイヴィッド・マクヴィカーで、振付のアンドリュー・ジョージ、装置のジョン・マクファーレン、照明のポール・コンスタブルら、イギリス勢のスタッフを結集して舞台上に作り出したのは、古代ローマの遺跡の中で1950年代的なファッションの人々がうごめく蠱惑的な世界。色彩的にも、内容に呼応するような腐敗一歩手前の美しさがある。

 主演のアグリッピーナ役ジョイス・ディドナートは、ヘンデルを得意とする超一流のメゾソプラノ。欲深い陰謀家をシニカルに演じて舞台を引っ張る。
 ディトナートと並んで際立つのがケント・リンジー。やはりメゾソプラノの女性だが、演じるのはアグリッピーナの息子ネロ(ネローネ)。ジェンダーを超えた神経症的な人物像は怪演と呼ぶにふさわしく、強い印象を残す。
 他に、アグリッピーナの陰謀の核になるフェロモン系ポッペア役のブレンダ・レイ(ソプラノ)、その罠にハマる軍人オットーネ役のイェスティン・デイヴィーズ(カウンターテナー)、皇帝クラウディオ役マシュー・ローズ(バス)、といった面々がそれぞれの見せ場で個性を発揮。物語の中を右往左往しながら楽しませてくれる。

 知名度は高くないが、一度観たら忘れられなくなるブラックなオペラ『Agrippina』を字幕付きで楽しめるという、めったにない機会。お観逃しなく。>

 上掲写真ポスターのアグリッピーナ役ジョイス・ディドナートから『The Hours』のヴァージニア・ウルフ役は、まず想像がつかない。

The Chronicle of Broadway and me #1015(Porgy And Bess)

2020年1月~2月@ニューヨーク(その7)

劇場前のポスター

 『Porgy And Bess』(2月1日13:00@Metropolitan Opera House/Lincoln Center)についての観劇当時の感想。
 

 全日程ソールドアウトになった2019/2020シーズン最高の人気作。観劇日が最終公演の予定だったが、人気のあまり、3回の追加公演が出た。
 充実した舞台の感想は、MEN’S Precious WEB版にアップ。そこにも書いたが、日本でもMETライブビューイング@映画館で4月3日~4月9日に観ることができる。
 ちなみに、ライブビューイングで上映されるパフォーマンスは観劇日に収録されたもの。オーケストラ席にいる日本人が映ったら、それは私かも(笑)。
 

 [追記]

 上掲リンク先の記事をブログ仕様にして以下に転載します(<>内)。
 「ゴスペル・ライクなコーラスと、多彩な歌手の魅力!躍動的で彩りも美しいアメリカーナ・オペラ!」のタイトルで2020年2月に公開されていたものです。

<短い序曲が終わらぬうちに薄い幕が上がると、ほの暗い中に骨格と屋根だけの二階家とそこに佇む人々が、ちょうどゴッホの「夜のカフェテラス」や「星月夜」を思わせる淡い青と黄を基調にした、くすんだ鮮やかさとでも言うべき美しい色合いで浮かび上がる。そして、序曲から途切れることなく歌いだされる「サマータイム」。それを包み込む柔らかいが厚いコーラス。
 METに久々に登場した『Porgy And Bess』の世界は、そんな風に始まる。

 ジョージ・ガーシュウィン(作曲家)が、デュボーズ・ヘイワードの小説「Porgy」並びに彼が妻ドロシーと共同で書いた同名のプレイを元に、作詞に兄アイラを加えて作ったのが、ジョージ自らが「フォーク・オペラ」と呼んだ『Porgy And Bess』。20世紀初頭のサウス・キャロライナ州チャールストンにある漁師の集落を舞台に、足の不自由な男ポーギーと荒くれ者の情婦だったベスとの愛情が描かれる。
 初演は1935年9月のボストンで、同年10月にブロードウェイで幕を開けている。その後ブロードウェイだけでも7回のリヴァイヴァル上演が重ねられた、世界的な人気作だ。

 MET初登場は1985年。そのナサニエル・メリル演出ヴァージョンは1990年まで4シーズンにわたり上演される人気作だったが、約30年ぶりに帰ってきた今ヴァージョンは、これがMETデビューとなるジェイムズ・ロビンソンによる新演出。オペラとしての『Porgy And Bess』の原点に戻りつつ、今日的で新鮮な感覚の舞台づくりがなされている。
 単なるポーギーとベスの悲恋物語ではなく、近代化の波にさらされるブラック・コミュニティの群像劇の印象が強まっているのは、ロビンソンの新たな演出意図の表われだろう。
 それを支えるのが、プリミティヴさを随所にのぞかせるゴスペル・ライクなコーラスとカリブ海経由のアフリカ色濃厚なダンス。ことに、柔軟で多様な表情を持つコーラスは全編にわたって作品の濃密な空気を醸成して素晴らしい。ちなみに、ダンスの振付は昨年ブロードウェイ・プレイ『Choir Boy』でトニー賞にノミネートされた若き才能カミール・A・ブラウン。

 もちろん、ソロの聴き応えは充分。しかも、多彩。
 ポーギーのエリック・オーウェンズ(バスバリトン)、ベスのエンジェル・ブルー(ソプラノ)の他、「Summertime」を歌うクララ役ゴルダ・シュルツ(ソプラノ)、「My Man’s Gone Now」を歌うセリナ役ラトニア・ムーア(ソプラノ)、「It Ain’t Necessarily So」を歌う悪役スポーティン・ライフを演じるフレデリック・バレンタイン(テノール)等、それぞれのハイライト・シーンで、聴かせ、魅せてくれる。
 主要キャラクターではない物売り(いちご売りとカニ売り)の歌声が楽しい場面等もあり、全編にわたって飽きることがない。

 そして、最初に書いたように、装置、衣装、照明が一体になった舞台全体の、ほの暗く淡いけれども鮮やかに感じる色彩感が美しく、心に染み入る。一転、中盤のピクニックに行く島では明るくポップなセットも登場。印象に残る。

 そんな風に様々な面で成果を上げている今回の新演出版を観て、音楽的に強く感じたのは、作品に流れるガーシュウィンの「フォーク・オペラ」的感覚が、例えばこの3月に来日するリアノン・ギデンズに代表されるような現代のアメリカーナ音楽の作り手と直接つながっているということ。そこには、アメリカ音楽の歴史に対する今日的な視線がある。

 METで観るアメリカ産オペラ『Porgy And Bess』は、やはり格別。ライブビューイング上映も人気になること必至だろう。どうかお観逃しなく。>

 2012年ブロードウェイ版の感想はこちら